社会情勢が目まぐるしく変化する時代、私たちの生活も何が起きるか分かりません。そんな時代だからこそ、その時、その人らしく暮らせる「住まい」はとても重要です。「住まい」への考え方は、従来の一戸建ての持ち家が共通のゴールではなくなり、その時の自分に合わせて積極的に住み替え、年を重ねた後も自分らしく暮らせる「住まい」への欲求が増しています。
本シンポジウムでは、未来が予測できない時代において超高齢化社会が進み、不利益な境遇に立たされる人が増えていることが大きな課題となっているいま、「住宅政策と福祉政策の連携はどうなっているのか」、「高齢者をはじめとした社会的立場の弱い人々の住み替え時に何が起きているのか」、そして「賃貸住宅の現場でこの課題に果敢に取り組んでいる事例」をご紹介し、これからの日本の賃貸住宅におけるビジネスモデルのヒントを提示します。
主催者挨拶
稗田 昭人
一般財団法人 住宅改良開発公社
理事長
基調講演不動産×福祉で拡がる賃貸住宅の可能性
住宅政策と福祉政策の連携が、国レベルでも自治体レベルでも、居住の現場のレベルでも求められている経緯から、住生活基本法と住宅セーフティネット法の展開、空家特措法と最前線の現場について述べたい。
大月 敏雄
東京大学大学院
工学系研究科建築学専攻
教授
1967年福岡県生まれ。東京大学卒業後、同博士課程修了。博士(工学)。古い集合住宅の住みこなしや、アジアのスラムのまちづくり、戸建て住宅地のマネジメントなどを中心に、住宅地の生成過程と運営過程について研究。
あしたの賃貸レポート入居者から見た賃貸住宅住み替え事情と
住まいへの希望
住み替え理由で上位となった「立ち退き」の分析をベースに、母子・父子家庭世帯、生活保護受給世帯、親を在宅介護している世帯、障がいのある子を持つ世帯などの住み替え事情とさまざまな世帯の方がこれからの住まいに求めるサービスについて紹介する。
松本 眞理
一般財団法人住宅改良開発公社
住まい・まち研究所
所長
法政大学大学院経営学専攻修士課程修了。住宅金融支援機構にて主に賃貸住宅融資部門を担当。2018年より、一般財団法人住宅改良開発公社住まい・まち研究所長、一級建築士、経営学修士、カラーコーディネーター一級。
事例講演超少子高齢化問題に『住まい』はどこまで踏み込むか?
日本の人口問題統計から未来を見据えた時に、医療介護専門職が危惧する「内なる国防」といえる問題に住まいは準備できているのか?そのコンセプトモデルを介護屋目線で考えてみたノビシロハウスをご紹介します。
1974年生まれ。東北福祉大学社会福祉学部社会教育学科卒業後、横浜の特別養護老人ホームに就職ののち、25歳で株式会社あおいけあを設立。平成24年11月「かながわ福祉サービス大賞~福祉の未来を拓く先進事例発表会~」において大賞を受賞。平成28年10月NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~ “あなたらしさ”は、ここにある 介護施設経営者・加藤忠相」に登場。令和元年5月18日「Ageing Asia Global Ageing Influencer 2019 (アジア太平洋地域の高齢化に影響を与えている最も影響力のある指導者)」に選ばれる。
事例講演高齢者と若者が共生できる賃貸住宅とは?
高齢者の住まいを、高齢者専用住宅のように世代で区切るのではなく、若い世代の人と共生し、お互いが支えあい、双方に価値のある暮らしができるようノビシロが考えた「ノビシロハウス」の仕掛けや実態、今後の展望についてご紹介する。
2012年、自身が上京した際の原体験から不動産仲介業を始める。その中で、高齢者が部屋を借りにくい実態を知り、2019年9月に株式会社ノビシロを創業。高齢者が安心して暮らせる賃貸住宅「ノビシロハウス亀井野」をオープン。
事例講演誰でも住まうことができる賃貸住宅の限界に挑む
「全ての人に心休まる住まいを」をビジョンに掲げ、単身高齢者や低所得世帯等の一般には敬遠されがちな世帯に対して安価に住居を提供するソーシャルベンチャーの取組を紹介したい。民間企業が取り組む意義や、直面する課題・苦悩に関しても紹介したい。
松本 知之
Rennovater株式会社
代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。会社勤務の傍ら、東京にて困窮者へ住居提供する活動を2011年から個人事業として開始。個人事業の8年間の経験を経て、2018年5月にRennovater株式会社を設立。現在は、関西中心に120室以上を提供している。
質疑応答
視聴者のみなさまからお寄せいただいた質問に、講演者が生で回答させていただきます。